作者 紀代美・U
昨年の十月、気軽に「いいわね!」と相づちを打ったのが元で、長野県下伊那郡大鹿村まで松茸を食べに行って来ました。
事の始まりは「楽しい事をしに行かない。期間限定で、松茸をもう結構という位、食べさせてくれる処があるの。そこは一日二組しか受けないんですって。」というW婦人からのお誘い。。
「そんな処があるの、いいわね!」と相づちを打つ。
「それが、十五日に一組しか空いてないんですって。」
「そうなの。主人に代わるわね。」と受話器を手渡す。
ご夫妻と主人が仲の良いゴルフ仲間で、私はゴルフ以外の時に、仲間に入れてもらっています。
「行くことになったよ。一泊三万円だってよ。」
「え!、そんなにするの、しかも泊まりがけ……。」
十七日には合唱祭という、私にとっては大事な行事があるので、困惑することしきり。でも、今更お断りするのも不粋な話です。
二日後、中央線特急あずさに乗って茅野まで行き、ご夫妻と犬のアオちゃんの出迎えを受けて、山越えのドライブ開始。十年前に来た時とは道が違うみたい、等の話を聞きながら、一車線がやっとの道を左に右に約二時間、片側は谷の所もありヒヤヒヤものです。蛇足ながら、犬も車酔いすることを初めて知りました。
日暮れが心配される頃、中腹のちょっとした平坦地に『旅舎右馬充』(りょしゃうまのじょう)の古色蒼然とした看板を見付けた時は歓喜ものです。
時代がかった宿で、一階と二階に一組づつしか泊められない事情も納得。
宿泊客全員(九名)での食事は、予告通りの松茸づくし、焼松茸・茶碗蒸・すき焼き(お肉は信州牛)、松茸ご飯・お吸い物等々。松茸をふんだんに使ったお料理が次々と出され、松茸を堪能しました。美味しい食事に、年上とおぼしき相客や、宿の人たちとも話が弾み、楽しいひと時を、ゆったりと過ごすことができました。
物の見方、価値感は人其々。私には、随分高くついた松茸で、二度とないぜいたくをしたように思えます。 でも、スリルもあり十分楽しかったミニ旅行、このような機会を与えて下さったご夫妻の好意は有難く、心から感謝しています。
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