2012年1月18日水曜日

『みんながつながる歌声交流会』に参加して



                       作者 平吉・A
みんなの大きな歌声がひとつになった時、会場内に生れた一体感。
はい~今度は“里の秋”を歌いましょう。歌集の8頁を開いて下さい。新宿の歌声喫茶“ともしび”の進行役の歌手の声で歌集を手にした参加者達がいっせいに頁をめくる。伴奏のメロディーに続き、皆が歌い始める。「更けゆく秋の夜~」歌手の歌を中心に皆の歌声がひとつになった。視覚障がい者の皆さんも前に出て、楽しそうに歌っている。恥じらう者はいない。皆はつらつと思いきり口をあけ、大きな声で歌い続ける。まだ幼かった頃に戻って・・・
今回のプロデュース役の“ともしび”は、1954年西武新宿駅近くにあった食堂で、1950年後半から60年代にかけて、戦後の荒廃から立ち直り、自由を謳歌せんとする若者が多くいた時代に、人々の希望と願いがこめられ、ステージリーダーと一緒に皆と歌い交わす歌声は生きる力となり、大ブームを起こした歌声喫茶となりました。当時は東京だけでも30件近くの歌声喫茶が生れ、国民的ブームと言われました。しかしカラオケ等の流行により一時はブームも去り、その存在も風前の灯に見えましたが、ここへ来て団塊の世代を中心に再び息を吹き返したようです。特に”ともしび”では年間200ステージ以上の出張活動も行い、店内もまるで昭和時代の様なにぎわいを見せているそうです。
そもそも歌声喫茶はカラオケと違い、進行役を中心に皆で歌う為強い連帯感が生まれ、初めて顔を合わす人同士でもすぐに打ち解ける事が出来ます。そして単にノスタルジーに浸る場所ではなく、何かと忙しい現代社会にとってのオアシス的存在になっている。そして歌声喫茶の魅力は何といってもその懐かしい楽曲群にあり、昭和歌謡や当時親しまれた名曲等が多く用意され、皆で歌ったあの頃に戻れる事ではないでしょうか。今年の実行委員が“ともしび”に企画運営を委託したのも、そんな期待があったからだと私は思います。
初秋の10月13日、みんなで一緒に歌う楽しさ、大声で歌う爽快感を味わいながら、出会いと交流の場をつくろうと多くのボランティアや障がい者を含む約70名が会場のミューズ展示室に参集し、『みんながつながる歌声交流会』が開催されました。
皆さんには馴染みの無い催しではないかと思いますが、例年野外交流会として所沢市社会福祉協議会とボランティア連絡協議会協賛により実施されていた催しの室内行事としての新しい試みです。
交流会は、柴井代表や来賓の社協梅田事務局長の「皆で楽しく過ごしましょう」との挨拶の後、皆さんにお馴染みの玉津島さんの乾杯でスタートし、“ともしび”の歌手や演奏者の手慣れた進行により、スムーズに楽しく進んで行きました。
そんな中で私の印象に強く残ったのは、歌う事に最もハンディを持っていると思われた、聴覚障害や言語障害に関係した手話サークルや手話ダンスの皆さんの活躍でした。事前にかなり練習をした様で、積極的に前に出て楽しそうに場を盛り上げます。観ていてその懸命さに感動を受けたのは私だけでしょうか。そして玉津島さんの「涙そうそう」、温かみのあるその歌声に感動し、涙してた人がいたのも印象的でした。
4回にわたり実施された実行委員会にはボランティアグループ等11団体が参加し、それぞれのグループの活動特徴を存分に生かした協力がなされました。今回の行事には、参加者が持つ視覚・聴覚・言語・肢体・精神等の障がいのどれをとっても、歌う事への障がいが予想以上に大きく、参加者が歌を楽しむ為に何が出来るのかが真剣に検討されました。
まず重要な歌の選曲には、今回の催しをプロデュースした“ともしび”が豊富な経験を生かし、手話サークルや手話ダンスサークルなどのレパートリーや要望を聞きながら約30曲にまとめ、視覚障がい者用歌集作成には点訳グループ、聴覚障がい者の為のホワイトボードへの要約を要約筆記グループ、肢体・視覚障がい者のガイドには我がふれあいなどガイドボランティアグループ、聴覚や言語障がい者には手話サークルが日頃の経験を活かして協力する事が決定しました。その他のグループは受付・記録・案内・会場設営を担当する事になりました。
私はいきなり元ホテルマンからか会場設営担当に指名されました。そして後日、柴井代表や社協の佐藤さんと一諸にミューズ事務局・ケータリング担当者との交渉をするはめになり、その席で予想もしない事に驚かされる事になりました。何と歌声交流会の為に契約した展示場は、あくまで展示中心で音楽などの大きな音を出すことが禁止されており、その点に強い念押しがなされました。また飲食予算も募金の補助金から出す為か弁当代程度しか取れずに、メニューを組むことすら出来ません。でも経験豊富な佐藤さん達は、ミューズ事務局の本音と建前を見抜き、のらりくらりと交渉を重ね、窮状をみかねた事務局から飲み物の持ち込みを打診され何とかメニューも組め、また歌の問題も数曲だけならとの回答を引き出し、何とか実現にこぎつけました。
しかし問題はこれだけではありませんた。以前はバス数台分も申込みがあった障がい者の申込みが、今回は実行委員を含めても21名しかおらず、やむなくボランティアを倍以上増して何とか体裁が整いました。しかし参加者の一部からは、ボランティアの多さに批判もあったようです。
終了後様々な感想や意見が有りましたが、障がい者を含む多くの参加者から「とても楽しかった」との声があり、室内向けの交流会としてそれなりの目的は果たせたのではないでしょうか。改めて裏方の大変さを実感できた貴重な経験でした。 
最後に会場設営・ガイドボランティアにご協力頂いた皆様、本当にありがとうございました。

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